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「優しく殺す殺し屋」ブラッド・ピットがアメリカ現代社会の闇を炙り出す

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ブラッド・ピットが、「優しく殺す」をモットーとするクールな殺し屋ジャッキー・コーガンを演じ、ハリウッドを代表する演技派俳優陣が集った今年最注目サスペンス・アクション映画、その名も『ジャッキー・コーガン』。そんな個性豊かな悪人たちを描きながら、アメリカ現代社会の闇をスタイリッシュかつ容赦なく炙り出したのは、アカデミー賞ノミネート作品『ジェシー・ジェームズの暗殺』に続き再びブラピとタッグを組んだ、アンドリュー・ドミニク監督だ。

2012年カンヌ国際映画祭に出品され、世界中の映画批評家たちから過去に類を見ないほどの絶賛レビューが飛び交ったという本作について、ドミニク監督に語ってもらった。


まず、原作小説「コーガンズ・トレード/Cogan's Trade」の映画化について、「最初に読んだ時は、とにかくキャラクター造形が魅力的だと思った。だけど読み込んでみたら、これは経済危機の話じゃないか? って気付いたんだ。賭場というビジネス/市場が、規制が足りず崩壊していく...これは当時(2008年)の世界的な経済危機を反映した物語だなと。で、この2つを背景にして描いたら面白いんじゃないかと思ったんだ」と、単なるサスペンス以上の深みを読み取ったことがきっかけだったと語る監督は、自身の作品に再びブラピをキャスティングした理由についてもたっぷり語ってくれた。

「この役(J・コーガン)はある意味、往年のスティーブ・マックィーン的な役柄。いわゆる"映画スター"が必要だったんだ。彼自身は寛大な人間なだけに、今回は自己中心的なヤツを演じてもらおうと思ってね。ある意味、ブラッド・ピットという人格にバケーションを取ってもらいたい、という感じだったかな(笑)。役者っていうのは自分自身にすごく似てるか、もしくは真逆な役柄しか演じられないものだから。もちろん彼との仕事が好きだからっていうのもあったよ」

「まず"演じる"ということが、例えば"子供たちがカウボーイとインディアンになりきって戦争ごっこをする"というのと同じようなものだってことを、彼はよく知っている。役者の一番のツールは想像力。監督の仕事は、その想像力をさらに盛り上げること。僕はテイク毎にシナリオを『こういう状況だったらどう?』と変えていくんだけど、彼もそれに合わせて遊び心をもって変えてきてくれる。そういうところがお互い楽しめるからかな」
そんなブラッド・ピットに監督は、「彼はどこかミステリアスなところを持ち続けてるんだ。全てを分かった気になれないってところも魅力」とベタ惚れの様子で、「製作費も彼が率先して集めてくれたし、脚本段階ではプロデューサーとして自分の意見もしっかりと言う。でも実際撮影に入ると、監督と一役者という関係になる。編集になると求められた意見に応えてくれるんだ」と、ブラピはクリエイティブな面でもかなり深く関わっているようだ。

また、今作のタイトル(原題)『Killing Them Softly/優しく殺せ』については、「ジャッキー・コーガンは人殺しを生業にしているけど、殺す対象の感情とか心理なんかには触れたくないから、距離を置いて殺そうとする。それを彼は"優しく殺す"という言い方をするんだ。殺される相手がある種の安心感に包まれて、なるべく痛みを少なく死ねるようにっていうのが彼の殺りかた。実際プロの殺し屋ってそうなんじゃないかなって、僕は想像してるよ」とのことだが、ここで"あまりに周囲の悪党が頼りなさ過ぎて、ジャッキーが頼りがいのある真っ当な人間に見えてしまうのだが..."と尋ねてみた。

「そりゃそうだよ! 奴らは底辺で生きてるアホな犯罪者なんだから。『すげえ良いアイデア思いついたぜ!』とか言って、それも超アホな案っていう(笑)。とにかく小物なんだよね。ある意味、本作はいわゆるハイスト(強奪)・ムービーなんだけど、本来は綿密な計画を立てて実行するところを、彼らはとにかく金がないから(雑に)盗みを働く。で、まだ盗んでもいない金を手にしたつもりになっちゃうから、当然"こんなこと"になるんだ。これは多くの人が同じだと思うけどね」

劇中、Ketty Lesterの「Love Letters」をBGMに、重要キャラが射殺されるシーンがある。監督は「とにかくタイトルが"優しく殺せ"だから、このシーンはまさに"ララバイ(子守唄)"のような感じ。とてもスローな映像だから、抽象的で美しくさえ見えるシーンだね。僕としては、それまでの暴力表現が直接的で残虐なものだっただけに、ここで一度美しく見せておくことで、また残虐なシーンに戻ったときにショックを与えられるようにって。編集担当の奴は『栄養価が全くないキャンディみたいなシーンだ』って言ってたよ(笑)」と笑うが、中盤の非常に印象的なシーンなのでお見逃しなく。


最後に、本作に込められた最大のメッセージを語ってもらった。ムダに派手なドンパチや安っぽいお涙頂戴を徹底して排除した、ドミニク監督の映画哲学や世相を切り取る鋭い視点、本作の激シブな魅力の理由が窺い知れるはずだ。

「とにかくアメリカという国を直視すると、こういうことなんじゃないか? って。アメリカというのは経済概念であり、国の秩序に関してはダーウィン的な激しい競争原理みたいなものが根底にある(進化論の中心概念は生存競争)。"自由"を標榜してはいるけど、それは"市場において競争できる自由"っていう意味なんだ。言い換えれば、コミュニティではなく個が集まっている国、それがアメリカなんじゃないかな」

「2008年に関して言えば、選挙ではとにかく『トゥゲザー』『みんなで一つになって』ってことばかりだった。まさに経済危機でメルトダウンしている最中にね。なんて不条理なことを言ってるんだ? そんなことできるわけないじゃないか! って感じだったよ。本作で描かれている出来事や底辺の人々は、アメリカの全てのソサエティで見られるもの。だから『アメリカは国家じゃなくてビジネスだ』っていうセリフは、本当に僕が思っていることなんだ。ちょっと真っ直ぐ出しすぎちゃったかな(笑)」

映画史に刻まれる新たな"殺し屋"ムービー。ブラッド・ピット主演最新作『ジャッキー・コーガン』は4月26日(金)全国ロードショー

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