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「ラジオがおもしろい芸人」は「本物」である―――。
そんなコンセプトでお笑い芸人のラジオに特化して作られたのが『お笑いラジオの時間』(綜合図書)という本だ。
今、一番面白い雑誌のひとつである『KAMINOGE』のスタッフが編集に入っていることもあり、おぎやはぎ×吉田豪、オードリー、山里亮太、大谷ノブ彦、東京ポッド許可局、松村邦洋、水道橋博士、そして裏方からも『JUNK』の宮嵜守史、『オールナイトニッポン』の宗岡芳樹、『コサキン』の構成作家・鶴間政行という充実なラインナップで、それぞれ最低でも10ページ以上の濃厚なロングインタビューが掲載されている。(以下、引用はすべて『お笑い芸人ラジオ』から)
中でも異質な輝きを放つのは『ルネッサンスラジオ』(文化放送)の髭男爵・山田ルイ53世のインタビューだ。どうしても『JUNK』や『ANN』中心になってしまう中、この知る人が知る異色のラジオ番組を取り上げたインタビューは出色だった。
『ルネラジ』は不思議な番組である。元々は芸人深夜ラジオのゴールデンタイムとも言える深夜1時に始まった番組だったが19時に移動したり、ポッドキャスト限定になったり変遷し、現在は早朝4時に放送されている。
深夜1時からの初期、裏は『くりぃむしちゅーのANN』。FMでは倖田來未の番組も放送していた。「完全に戦国(時代)っていうか、ウチは大名ですらないですから。(略)農民っていうか、その地方の山賊みたいなことですよね」
最初こそ、「兄貴的な存在」としてリスナーに「希望を与えよう」としていたが、放送枠が辺境に追いやられるごとに、どんどん「ゲス」な方向に。今ではそれに共鳴した「社会不適合者」と呼ばれる熱烈なリスナーに支えられているというのだ。ポッドキャストのみの時代はほぼノーギャラで続けていた。それでも続けられたのは「ラジオ愛」だったと山田は言う。だが、そこにはラジオ愛だけではない芸人としての矜持も垣間見ることができる。
髭男爵はいわゆるキャラ芸人だ。トークはできないのではないか。そんなイメージを持たれがちだ。
「そういうのを、『違うよ、もっとがんばってるよ、ガワだけじゃないよ』っていうのはありますね」「ボクはずーっと『ある日、誰かに見出されないかな?』って思いながら喋ってます」
『エンタの神様』などで数多く世に出たコスプレキャラ芸人たち。彼らはそれぞれキャラだけではなく「ホントはできるんだ」という思いを抱えているはずだ。『ルネラジ』はそんな思いで地上波放送が一時終わっても半ば意地でポッドキャストとして放送を続け、「生き残るため」の収益構造を作り上げた。そして再び地上波に"再生"を果たしたのだ。
だからといって簡単にキャラを捨てることを山田は良しとはしない。
「『それは厚かましいな』と思っているほうなんで。(略)コスプレキャラ芸人の因果応報というかね。でも、こういうラジオを聴いて、トーク方面で使っていただけるようなテレビがあればそれはもちろんありがたいです」
キャラ芸人としてのプライドも持ちながらも、芸人としての夢を抱いて、山田はラジオで語り続けているのだ。
文=てれびのスキマ(http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)
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