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【宮崎あおいの取扱説明書その1: 宮崎あおいは冬の朝に弱い】
おそらくほとんどの方が一度は考えたことがあるだろう。もしかしたら宮崎あおいは、冬の朝に弱いのではないか、と。血圧も低そうだし、寒がりそうだし、毛布にくるまっている姿が似合いそうだし。そしてその予想は、事実正しい。半年ほど彼女と一緒に暮らしているぼく、相沢直が言うんだから間違いない。宮崎あおいは、確かに冬の朝に弱い。
もちろん女優としてのプロ意識は高い彼女だから、仕事のある日はしゃんとしている。それが休日となると、しかも今みたいに寒い季節だと、もう駄目だ。毛布にくるまって、猫のように体を丸めて、スヤスヤ、という表現がこれほどまでにふさわしいのかと思えるほど安らかな寝息を立てて眠り続ける。
確かに幸せな光景ではある。宮崎あおいの寝顔は、まるでついさっきこの世に生を受けた赤ん坊のような神々しさがあって、いつまで見ていても飽きるということはない。
しかし、さすがに、もう午前11時だ。いくらなんでもそろそろ起きないと、朝ではなく昼になってしまう。だから今日は、冬の朝に宮崎あおいを起こす際に注意しなくてはならない、取扱説明書をいくつか紹介しよう。
(※注)
本記事は個人の妄想を勝手に書き連ねたものであり、以下の写真は本文の内容とは一切関係ありません。
【宮崎あおいの取扱説明書その2: 宮崎あおいの蹴りには注意すること】
宮崎あおいは世界一ねぼすけなお姫様なので、ちょっと声をかけたくらいでは決して起きることはない。だから体を揺り動かしたり、毛布をひっぺがそうとするしかない。
「あおい。起きろ。もう朝だぞー」
「むぅ。むぅー!」
宮崎あおいがこのようにむずがったときは、蹴りに注意しなくてはならない。彼女に悪気があるわけではないのだが、寝起きの宮崎あおいは不快感を示す際、両足をバタバタさせるからだ。子どもか。当たりどころが悪いと、結構なダメージになるから気をつけよう。
【宮崎あおいの取扱説明書その3: 眠っている宮崎あおいには本心を伝えられる】
彼女が眠っているときにしか出来ないこともある。それは、自分が普段思っている本心を伝えるということだ。宮崎あおいは非常に照れ屋で意地っ張りなところがあるから、たとえば愛のささやきなどは、起きているときは耳も貸してくれない。かえって、機嫌が悪くなってしまうほどだ。
だけど眠っているときの彼女は、そういった防御心が弱くなっているから、本心を伝えることができる。たとえば、眠っている宮崎あおいの耳に口を寄せて、こうささやいてみよう。
「あおい。いつも一緒にいてくれて、ありがとな」
普段なら怒り出すようなこんな言葉も、眠っているときの宮崎あおいなら大丈夫。
「にひひひー」
と照れくさそうに、まんざらでもない笑顔を見せてくれる。そのとき寝ぼけながらも、手の小指を差し出してくれることがたまにあるので、そんなときは小指で握り返してあげよう。うむうむ、と、彼女は大人びた表情で、満足げにうなずいてくれるだろう。
【宮崎あおいの取扱説明書その4: 冬の朝の宮崎あおいは好きなものが二つある】
さて、そろそろ本格的に宮崎あおいを起こしてみることにしよう。冬の朝の彼女は、好きなものが二つある。
一つはカップスープだ。湯気を立てたカップスープの香りは、宮崎あおいの大好物なのだ。ここでようやく、彼女はまだ毛布にくるまったままだが、体育座りになる。
「熱いから、気をつけるんだよ」
宮崎あおいは目をつぶりながらもうなずいて、スープを口にするだろう。
そして、彼女が好きなものがもう一つある。ぼくは何も言わずに、部屋の窓を開ける。冬の冷気が部屋に入ってくる。
「ぎゃー!」
と彼女は叫んで、頭から毛布をかぶり直そうとするが、ぼくはそれを止めて、彼女に伝える。
「あおい。ほら、外」
ん?という顔を一瞬浮かべて、はっと気付き、宮崎あおいは立ち上がって窓の外を見る。そこには一面の真っ白な雪景色が広がっている。そう、彼女は、雪が好きなのだ。一度、その理由を尋ねてみたことがある。彼女は少し考えてから、きれいなものもそうじゃないものも、平等に覆い隠してくれるところかな、と答えた。よく分からないが、なんとなく分かる気もする。宮崎あおいなら、そんなことを言いそうじゃないか。
彼女は白い雪景色を、楽しそうに、見つめている。そんなときの宮崎あおいは、雪よりもまぶしく輝いているから、あまり見つめすぎないように気をつけよう。ゴーグルでもかけないと、とてもじゃないが美しすぎて、目が眩んでしまいそうだから。
だからぼくは話をそらす。
「それにしてもあおい、今日はずいぶんねぼすけだな。昨日寝たの、遅かったの?」
彼女はそっけなく答える。
「うん。まあね」
「あんまり夜更かしすると、体に良くないぞ。いくら休日とは言え、規則正しい生活をだな......」
と、言ってるそばから、彼女はまた布団に潜り込んでしまう。
「こら、あおい!」
布団の中から、宮崎あおいの手が出てきて、叱りかけたぼくは虚をつかれる。
「はい、これ」
彼女の手には、手編みのマフラーが握られていた。
【宮崎あおいの取扱説明書その5: 宮崎あおいは編み物が得意である】
宮崎あおいは編み物が得意だ。今どき珍しいが、休みの日には家にいることが多い彼女にとっては、もってこいの趣味なのだろう。
「昨日、編み始めちゃったら、止まらなくなっちゃって。完成してしまいました」
ぼくは、彼女が昨夜夜更かしをして編んでくれたマフラーを、首に巻いてみる。とても暖かい。宮崎あおいは、布団から頭をちょこんと出してこっちを見つめ、嬉しそうに笑っている。
思いがけないプレゼントに、そして彼女の存在に、ぼくは感謝して、真面目な顔で彼女に言う。
「あおい。いつも一緒にいてくれて、ありがとな。これからも、ずっと一緒にいような」
宮崎あおいは非常に照れ屋で意地っ張りなところがあるから、ぼくの言葉を聞いて、また頭まですっぽり布団をかぶってしまう。まったく。言ってるこっちだって、照れくさいんだからな。
ひどく寒い冬の朝。なのにぼくら、二人とも、頬を真っ赤に染めていた。
(相沢直)
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