『殺人の追憶』(03)『グエムル -漢江の怪物-』(06)『母なる証明』(09)のポン・ジュノ監督の最新作『スノーピアサー』は、自身初の国際キャスト&初の英語作品というハリウッド映画的一大スケールのドームで覆われてはいるものの、その実はジュノ節全開【オレたちが観たい骨太韓国映画そのもの】だ。
期待に違わずリアルな痛みを伴うアイロニーが五感に効く衝撃の一作だったが、それもこれもジュノ監督の徹底したコダワリの産物なのだ。
たとえばソン・ガンホ。兄貴演じるナムグン・ミンスは言語変換機を使って英語を話すという、ひと手間多い奇妙な設定だが、「ソン・ガンホ? 単純に彼が英語で話すシーンを観たくなかったからです(笑)」と突然のミモフタモない発言にゾクゾクする。だが、理由を聞けば、ナットクのナでございます。「『SAYURI』(05)という映画がありますよね? あの映画では中国女優に英語でセリフを言わすことをしていましたが、あれじゃ映画が台無しになってしまうと思います。僕の映画では、それだけは避けなくてはと思いました(笑)」。
要するにキャストが外国語を話す場合、母国語のように流暢で話すことを望み、それ以前に母国語以外の言語を話してほしくないという本音もある。「チャン・ツィイーさんが英語を話している途中にほかの言語が混ざって、ちょっとおかしな感じになる。それはないなって(笑)」。リュ・スンワン監督並に毒舌。これだから韓国映画人の取材は止められない。
ちなみに、おもむろにスマフォを取り出して、「最近は翻訳アプリがあるよ(笑)」と言い、何かを話すジュノ監督。すると「"レッシャ ハシル"」と日本語に変換した音声が! 「これはオススメですよ! だから、ミンスが使っている言語変換気はSF的な演出ではなくて、リアルです(笑)」と正当化。この小さなコダワリが、映画をとても面白くしている。
そして、TVCMでも最後にチラリと出ていた、列車がカーブするシーンも見逃せないポイント。「アメリカのある州にはU字型の線路があって、同じ列車なのに反対に走っているように見える瞬間があるそうですよ」と列車のドキュメンタリー映像を参考にさまざまなパターンの撮影を行ったといい、そこには「幼稚な発想と魂胆があります(笑)」とまた毒を吐く。
「これは列車の中で起こる物語で、すべての空間は車内ですよね。これって映画監督としてめったにない経験になるので、いっそ列車のすべてを出そうと、列車映画のなれの果てを見せたろうと。そうすればほかの監督は、もう列車映画が撮れないだろうって(笑)」。
確かに。この映画を観れば、もうここまでの列車映画は出てこない気もするが、韓国映画のポテンシャルは未知数だ。『スノーピアサー』越え痛快作が、この先も誕生するだろう。
映画『スノーピアサー』は全国大ヒット上映中
【参照リンク】
・『スノーピアサー』公式サイト
http://www.snowpiercer.jp/
・『スノーピアサー』特集
http://news.aol.jp/special/snowpiercer/
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