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2012年12月1日(土)より、トーキョーワンダーサイト(以下、TWS)本郷にて、展覧会の企画を志し活動している若手への支援・育成を目的とたプログラム「展覧会企画公募」の受賞企画展覧会が開催される。
ミラク・ジャマール&ニーン・山本-マッソン ≪ジェスチャー≫ 2012、HDビデオ
多様性を帯びる流動的な現在のグローバル社会では、価値基準や情報への関わり方も変容し、改めて「キュレーション」という行為やそれにまつわる思考が見直されている。また、芸術作品をモノとしてではなく、活動そのものやプロセスをアートとして提示し、リアリティを追求する動きも顕著に見受けられる。新しい表現の可能性のみならず、展覧会という表現の場をとおしていかに社会へコミットし、新たな協働の地平を開いていけるかー。
これまでの「展覧会」という枠組みを再考し、積極的に展覧会とはどのような場であるかをともに考え、試行していくという本企画の第7回目テーマは《キュレーションとは何か?》。多数の応募の中から3企画、さらに6月に開催したキュレーション・ゼミから1企画を奨励賞として選出した。
ミラク・ジャマール&ニーン・山本-マッソン【upDate 2011111111111s】
ティビ・ティビ・ニュースピール≪Les Evénements≫ 2012、ミクスト・メディア |
企画概要:2011111111111s は「トゥー・サウザンド・イレブンズ」と発音する。複数の視点から捉えたその年の多くの大事件や無数のやりとりから着想を得た、「2011年」をテーマに した展覧会である。その一年主要な見出しを占めていた騒ぎは、主流メディアとソーシャルネットワークの多様な経路を通じて伝達されてきた。 一つのスペース という制約の中で、そしてニュース記事の寿命とは対照的に、この展覧会に集まっている作品は、その年のリアルあるいはヴァーチャルな体験、直接的あるいは 遠くの現実を表す反応を誘発しようとしている。そこで2011という年の断片が映し出され、進行役(アーティスト) の視線がオブジェやメディア作品という形式に凝縮して現れる。作品たちは、過ぎ去った時代と私たちのやり直しの効く現在を結びつけるための(再)発見を呼 びさます引き金となるだろう。 |
エレナ・アコスタ
【Lleca(ジャカ)からcohue(コゥエ)へ -刑務所からのフォトグラフィー】
ビオレット・ブール ≪Lleca(ジャカ)からcohue(コゥエ) へ-刑務所からのフォトグラフィー≫ |
企画概要:本展のタイトルは、ベネエラの囚人が使うスラングから付けられた。「Llecaからcohueへ」とは、「ストリートから懲罰房へ」という意味。ベネズエラ人写真家のビオレット・ブールが、2年間以上に渡りベネズエラの5つの刑務所で実践してきた教育プログラムの成果を紹介する。 企画の特徴である参加型であり多元的なアプローチは写真行為の前での囚人の個人、または集団行動の観察と調査を意図している。この文脈において、写真は視覚伝達のための、そして被写体の象徴的現実を表現するためのツールとなりうる。 また、ベネズエラの刑務所制度におけるこの写真ワークショップのような取り組みを伝えることで、社会貢献につなげ、さらに発展させることも本展の目標の一つ。ベネズエラ写真史上初の試みであるこのプロジェクト。最終的には、囚人たちがより人間らしい適切な生活を送るための教育プログラムの樹立を目指している。 |
吉澤博之【But Fresh】
タニシK《 横浜への道》2001、パフォーマンス、東急東横線 |
企画概要:「処女作には、その小説家のすべての資質が含まれている」 文芸の世界では頻繁に言われることです。作家のデビュー作にも同じことが指摘できるのではないでしょうか。またミュージシャンが自身の楽曲を録音しなおすセルフカバーには、個々の姿勢が明確に出ます。作家が過去の作品を現在の視点から作り直すとき、何を感じ、作品をどう変えるのか、変えないのか。どちらにせよリアルな感情の振幅が作品に表現されるのではないでしょうか。本展ではコンセプチュアル・アート、フルクサス、ハイレッド・センターなど美術史の系譜を受け継ぎ、主にパフォーマンスや映像、インスタレーションといった手法で表現活動をしている作家6名に各自のデビュー作品を2012年バージョンとしてリメイクしてもらいます。作品の表面ではなく、出発点つまり作家の内奥に潜む意思に焦点を当てることで、表現欲求の根本を作家、企画者、鑑賞者で発見する機会にし、本展が2010年代のアートの呼び水となることを狙います。 |
高橋夏菜
【TOC [toasters city / country / cosmos]】※奨励賞(キュレーション・ゼミ選出)
市村香織《TOC》 2012、インスタレーション 制作協力:三分一穂波 |
企画概要:アーティストとキュレーターの関係性は、日常と非日常の間柄に似ているように思います。 本展で扱う作家・市村香織は、トースターと共に東京の街中を行動するインスタレーション《TOC》によって、非日常の光景を作り出そうとします。しかし、その行為は継続するほどに、彼女にとっての日常的な行動へと変化し、制作過程で非日常性は薄れていくのではないでしょうか。一方、キュレーションとしてのやり取りの中で生じたはずの関係性や言葉は、ひとつの作品として扱われ、展示されています。時に関係性が反転する曖昧な二者が組合わさった時、その間に境界線を引くことの能否や、そもそも境界線は存在するのか、という問いが立てられるのではないかと考えています。 |
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【開催概要】
会期: 2012年12月1日(土)~2013年1月14日(月・祝)
会場: トーキョーワンダーサイト本郷
開館時間: 11:00~19:00(最終入場は30分前まで)※開・閉館時間はやむを得ず変更される場合がございます。予めご了承ください。
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2012年12月29日(土)~2013年1月4日(金)
入場料: 無料
オープニング・レセプション: 2012年12月1日(土) 17:00~19:00
主催: 公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト
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