(編集部注:元々ストリート出身のグラフィティアーティストだった彼は、今やBanksyと並びコンテンポラリーアートの代表格ともいえる。アンドレ・ザ・ジャイアントの顔を「勝手に」モチーフにして街中に貼られた「OBEY」ステッカーは見覚えのある方も多いに違いない。前回2008年の大統領選挙でオバマを勝たせたポスターとしても、このオバマの顔を「勝手に」モチーフにした「HOPE」のグラフィックはもはや歴史的な作品といえよう。そんな彼が著作物の公正利用に関して述べたオピニオン記事をここに掲載したい)
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シェパード・フェアリーの意見
2012年9月7日金曜日
僕はAP通信社との間の民事裁判において、僕が事実を不当に改ざんしてしまったことにより、裁判所での信頼を失墜させてしまったことに対して責任を認めるよ。僕が事実の改ざんを認めた後、AP通信社はニューヨーク南部地区にこの件を、刑事事件として持ち込んだんだ。僕は裁判官の判決を受け入れるし、また、これを機に、この件を忘れたいと思っている。心の中に一瞬現れた恐れと気の迷いによって起こしてしまった僕の間違った行動によって、経済的かつ精神的な負担を僕自身と僕の家族に掛けることになってしまった。それだけでなく、僕の間違った行動は僕が前から勝ち取ろうと思っていた事、すなわち、芸術家が攻撃を受けずに如何なる場所においても刺激を受けて自由に創作活動を行う事、この主張を曖昧なものにしてしまった。
僕がAP通信社との法廷闘争を始めた理由は、著作物を公正に利用することが正しいと信じていたからだし、総ての芸術家の権利を守ろうと思っていたからでもあるんだ。オバマ大統領候補の希望と題されたポスターは、オバマ候補が当選後にこの国のためにしてくれる事に対する確信と、他のみんなの考えと行動を僕が高揚できるかもしれないという希望があったから配布したものなんだ。お金を儲ける、ってことは僕の考えに全く入ってなかった。資金が手に入った時、ポスターをもっと沢山作るために僕はそのお金を使ったし、オバマ候補者の選挙事務所にも献金したんだ。それでも残ったお金の殆どは、ACLU(アメリカ自由人権協会)やFeeding Americaといった僕がサポートして信奉する団体に渡したんだ。
著作物の公正利用に関して、僕はとっても有利な法廷闘争をしてたんだと当時信じてたし、今でも信じてる。勝ち目もあったと思っている。最初から僕の側には、嘘を言うなんていう気持ちはこれっぽっちも無かった。僕がポスター作成の基にしたとされる写真が、AP通信社が主張していた写真と一致し、僕が使ったと自分で思っていた写真とは異なっていることを僕が気付いた時、僕は混乱し怖くもなって、彼らが正しく僕が間違っていると認めてしまったんだ。その写真が僕の使ったものとは違う写真だったと主張できたかもしれなかったのにね。その裁判記録の修正をしなかったのは、大きな間違いだった。目先のコトしか見えてなかったんだと思う。僕の起こしたこの行動は、僕が裁判を有利に続けることの障害になったし、僕自身に信憑性があるかどうかをAP通信社に追求させることになってしまった。僕は、自分が起こしてしまったこの行動について毎日後悔している。前から僕を知っている人は、僕が自分らしくない行動をとってしまった、と思っている。
芸術は、政治的な発言と社会的な論評を行うための強力な道具である。これは僕が自分の芸術活動を行うなかで培ってきた認識だ。そして、建設的な対話を活発にするという目的で、僕は自分の芸術を使ってきた。知的財産所有権と写真家の権利に対して僕は理解を示している。だけど、それと同時に僕が賛同していることは、芸術家が現実社会に存在する物から刺激を受けて創造活動を行える自由が必要だ、ということだ。それはニュースの配信者がニュースを報道するときに、著作権に対する例外規定を用いなくてはならないことと同じだと思う。現実に存在している物を創造的かつ概念芸術的に変換するという芸術家の能力は、彼らが世の中の現実を芸術的に解釈するのに必要不可欠なものなんだ。もし、そういった自由が制限されることに芸術家が直面する状況になれば、それは芸術家のみならず、僕たちみんなが極めて重要なものを失うことになるだろう。
僕の名声に傷がついたことは、著作物の公正利用に関する論争に暗い影を投げかけてしまったという自責の念に比べたら、別に大したことじゃない。僕は自分の間違った行動によって、著作物の公正利用に関する議論をあらぬ方向に曲げてしまった。僕は、芸術家および芸術家の権利を支持する人たちの期待を裏切ってしまった。僕が今日ここで書いた議論によって、僕の深く後悔に満ちた時期に終止符が打たれればいいなあと思っている。でも、著作物の公正利用と芸術家の権利という肝心な問題は、まだまだ危機的な状態にある。表現の自由に盲従すること対して僕たちが警戒を緩めずに居続ける事、それが僕の望みだ。
(原文: The Importance Of Fair Use And Artistic Freedom)
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シェパード・フェアリー
アーティスト(ObeyGiant.com)
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シェパード・フェアリーの意見
2012年9月7日金曜日
僕はAP通信社との間の民事裁判において、僕が事実を不当に改ざんしてしまったことにより、裁判所での信頼を失墜させてしまったことに対して責任を認めるよ。僕が事実の改ざんを認めた後、AP通信社はニューヨーク南部地区にこの件を、刑事事件として持ち込んだんだ。僕は裁判官の判決を受け入れるし、また、これを機に、この件を忘れたいと思っている。心の中に一瞬現れた恐れと気の迷いによって起こしてしまった僕の間違った行動によって、経済的かつ精神的な負担を僕自身と僕の家族に掛けることになってしまった。それだけでなく、僕の間違った行動は僕が前から勝ち取ろうと思っていた事、すなわち、芸術家が攻撃を受けずに如何なる場所においても刺激を受けて自由に創作活動を行う事、この主張を曖昧なものにしてしまった。
僕がAP通信社との法廷闘争を始めた理由は、著作物を公正に利用することが正しいと信じていたからだし、総ての芸術家の権利を守ろうと思っていたからでもあるんだ。オバマ大統領候補の希望と題されたポスターは、オバマ候補が当選後にこの国のためにしてくれる事に対する確信と、他のみんなの考えと行動を僕が高揚できるかもしれないという希望があったから配布したものなんだ。お金を儲ける、ってことは僕の考えに全く入ってなかった。資金が手に入った時、ポスターをもっと沢山作るために僕はそのお金を使ったし、オバマ候補者の選挙事務所にも献金したんだ。それでも残ったお金の殆どは、ACLU(アメリカ自由人権協会)やFeeding Americaといった僕がサポートして信奉する団体に渡したんだ。
著作物の公正利用に関して、僕はとっても有利な法廷闘争をしてたんだと当時信じてたし、今でも信じてる。勝ち目もあったと思っている。最初から僕の側には、嘘を言うなんていう気持ちはこれっぽっちも無かった。僕がポスター作成の基にしたとされる写真が、AP通信社が主張していた写真と一致し、僕が使ったと自分で思っていた写真とは異なっていることを僕が気付いた時、僕は混乱し怖くもなって、彼らが正しく僕が間違っていると認めてしまったんだ。その写真が僕の使ったものとは違う写真だったと主張できたかもしれなかったのにね。その裁判記録の修正をしなかったのは、大きな間違いだった。目先のコトしか見えてなかったんだと思う。僕の起こしたこの行動は、僕が裁判を有利に続けることの障害になったし、僕自身に信憑性があるかどうかをAP通信社に追求させることになってしまった。僕は、自分が起こしてしまったこの行動について毎日後悔している。前から僕を知っている人は、僕が自分らしくない行動をとってしまった、と思っている。
芸術は、政治的な発言と社会的な論評を行うための強力な道具である。これは僕が自分の芸術活動を行うなかで培ってきた認識だ。そして、建設的な対話を活発にするという目的で、僕は自分の芸術を使ってきた。知的財産所有権と写真家の権利に対して僕は理解を示している。だけど、それと同時に僕が賛同していることは、芸術家が現実社会に存在する物から刺激を受けて創造活動を行える自由が必要だ、ということだ。それはニュースの配信者がニュースを報道するときに、著作権に対する例外規定を用いなくてはならないことと同じだと思う。現実に存在している物を創造的かつ概念芸術的に変換するという芸術家の能力は、彼らが世の中の現実を芸術的に解釈するのに必要不可欠なものなんだ。もし、そういった自由が制限されることに芸術家が直面する状況になれば、それは芸術家のみならず、僕たちみんなが極めて重要なものを失うことになるだろう。
僕の名声に傷がついたことは、著作物の公正利用に関する論争に暗い影を投げかけてしまったという自責の念に比べたら、別に大したことじゃない。僕は自分の間違った行動によって、著作物の公正利用に関する議論をあらぬ方向に曲げてしまった。僕は、芸術家および芸術家の権利を支持する人たちの期待を裏切ってしまった。僕が今日ここで書いた議論によって、僕の深く後悔に満ちた時期に終止符が打たれればいいなあと思っている。でも、著作物の公正利用と芸術家の権利という肝心な問題は、まだまだ危機的な状態にある。表現の自由に盲従すること対して僕たちが警戒を緩めずに居続ける事、それが僕の望みだ。
(原文: The Importance Of Fair Use And Artistic Freedom)
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シェパード・フェアリー
アーティスト(ObeyGiant.com)